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主治医が検査の画像を見せながら
説明を始めた。
癌は、基本的には患者本人に
告知する時代である。
「…Aさんね、自覚症状も無いから
驚かれるかもしれないのだけど、
画像のここ、これ、癌なんですよ」
思わずAさんの表情に目をやる。
悲嘆するだろうか。呆然とするだろうか。
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「へぇー(・A・)それは驚きました!
わからないもんですなあ。」
Aさんは目をまん丸にしてそう言った。
奥さんはちょっと眉毛を八の字にしたけど、
Aさんと顔を見合せたあとは
静かに説明を聞いていた。
その後何度かの通院を経て、
治療方針が決定した。
私はAさんが化学療法のために
入院したところから受け持ちを始めた。
「いやはや、癌だなんて
びっくりしちゃったけど、
先生これからよろしくお願いしますね」
担当医師として挨拶に行くと、
Aさんは笑顔で頭を下げた。